さて前回は久しぶりにランチェスターについて
書きましたが、今回はその続きを。
改めて、ランチェスターは2つの法則からなります。
第1法則:攻撃力=兵力数 × 兵器の質
第2法則:攻撃力=兵力数² × 兵器の質
敵味方の武器性能や兵士の力量に差がなければ
第1法則では「攻撃力≒兵力数」となり、
双方の損害の出方は1対1になります。
刀や槍での一騎打ち戦のイメージです。
一方、第2法則では敵味方の質に差がなければ
「攻撃力≒兵力数²」になります。
これはライフル銃や機関銃など射程距離が長い
武器を使って敵味方が離れて戦うイメージ。
この場合は「確率の法則」により2乗作用が
働くことで10人と6人が戦った場合、
実質的に100人と36人の戦いになります。
さて、これをビジネスに置き換えてみると
市場に多数の競争相手がいるときには確率的に
競争することを意味します。
そしてプレイヤーである企業は
「強者」と「弱者」に分かれます。
「強者」とは
①市場においてシェア1位であること
②市場シェアを26%以上確保
③2位の企業と10対6の差をつけていること
この3つを全て満たす企業が該当します。
③の「10対6の差」とは首位企業の売上が
10億円とすれば2位企業は6億円以下、
とか首位のシェアが40%あるとすれば
2位が24%以下、のような状態のこと。
そして、この「強者」以外は全て「弱者」と
なります。
例えば、2020年に自動車の国内登録車シェア50%超を
達成したトヨタは正に「強者」。
つまりホンダや日産、マツダなどトヨタ以外は
全て「弱者」です。
こうなると「2乗作用」がテキメンに効いて
強者の従業員一人あたりの経常利益は市場占有率の
2乗に比例して出るようになり、業界平均の
2~3倍にもなります。
実際、2020年度のトヨタの経常利益は29,323億円、
2位のホンダは9,140億円。
これは従業員1人あたりではありませんが、強者である
トヨタの利益が飛びぬけていることは分かります
(しかし、利益の桁が大きすぎて、よく分からん 笑)。
他にもランチェスター法則が経営の場面に
反映される例として、小売業の売場面積で
考えてみましょう。
それは商品の品揃えや販売員の質などに差がなければ
売上高は売場面積の2乗になるということ。
例えば、500坪と1000坪の競争であれば、2乗効果で
250,000と1,000,000となり、売上は1対4に。
坪あたりの経費は同じとすれば、経常利益では
大きな差がつきます。
また同じく店舗で売場面積が400坪として
一方は100坪の4フロア、もう一方は400坪の1フロア。
そうすると2乗作用で前者は10,000 × 4=40,000、
後者は160,000となり、4倍の開きが生じます。
コンビニ業界はセブンが強者として君臨する一方で
強者がいない業界もあります。
例えばANAとJALの大手2社が競う航空業界や
ドラッグストア業界、回転すし業界などは
シェアが近い多数の企業がひしめきしのぎを
削っています。
もちろん、すぐにこの結果になるわけでもなければ、
必ずこの結果になるわけでもありません。
しかし、この強者と弱者の関係のままの競争を
長く続ければ、これに近い結果に収斂されていく
ことが予想されます。
いずれにしても強者がより優位になることに
違いはないでしょう。
だから弱者は劣勢になることを避けるために
第1法則で戦うことで2乗作用を回避して
損害を抑えることが肝心です。
そのためには刀や槍での対決のように
接近戦、直接戦、一騎打ち戦、局地戦を
行う必要があるのです。
今回はランチェスター法則が経営に作用するケースに
ついて少しだけ触れました。
他にもいろいろな場面がありますので、またの機会に
おいおいご紹介したいと思います。