2023年4月1日に金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な
監督指針」が改訂されました。
これにより金融機関は経営者保証の徴求を行いにくくなりました。
また、金融庁は金融機関に対して「経営者保証解除に前向きに
取り組むこと」と指導しています。
しかし、すべての事業者が「経営者保証解除」をできるわけ
ではありません。
今回は「経営者保証解除を依頼するあたり、金融機関に前向きに
取り組んでもらうために知っておくべきこと」について
お伝えします。
1.経営者保証解除を依頼できる事業者に求められる要件
「経営者保証解除(既存融資)」や「経営者保証免除(新規融資)」
を依頼できるのは、以下の「経営者保証に関するガイドラインの
要件」をクリアしている事業者です。
●資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に
区分・分離されている
●財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能
●金融機関に対して、適時適切に財務情報が開示されている
2.「資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が
明確に区分・分離されている」とは?
資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に
区分・分離されているとは、最低でも以下の3点がクリアされて
いる必要があります。
(1)法人と代表者との関係において、法人と経営者の資産・経理が
明確に区分されている
(2)法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、
オーナーへの貸付け等)について、社会通念上適切な範囲を
超えていない
(3)法人から経営者への貸付金・仮払金等が、総資産の1%以下
または100万円以下である
3.「財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が
可能である」とは?
「財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が
可能である」については、明確な基準が存在するわけではありません。
それでもあえて「目安」を設けるなら、これも保証協会の保証つき
融資「事業承継特別保証制度」の「財務要件」はクリアしておきたい
基準になるのではないかと考えます。
財務要件とは、以下の2点です。
(1)資産超過
(2)EBITDA有利子負債倍率(*注)が10倍以内
*注:EBITDA有利子負債倍率
=(借入金・社債ー現預金)÷(営業利益+減価償却費)
4.「金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている」とは?
「金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている」については、
以下の3点が最低必要条件になるでしょう。
(1)事業計画書の作成
(2)決算書の開示
(3)試算表の提出(毎月)
「経営者保証」は心理的な負担もあり、また経営者自身に万が一の
ことがあった場合、相続の対象になります。
残された家族が事業に関与していない場合にも関わらず、「保証人」
になることは避けたいと考える経営者は多いはずです。
自社の業績や現状を改めて振り返り、「経営者保証解除」の可能性が
あれば、ぜひ専門家へ相談してみてください。