コロナの影響が始まってから創業や起業を
目指す人が増えています。
自治体で経営相談員をやっているとそれを実感します。
(コロナの影響がある人も、ない人もいると思います)
行政もそれを理解して創業支援策を一段と充実させる
傾向が見えます。
私自身も4月から新たに創業支援のお仕事が増える
こととなりました 笑
さて創業、特に創業資金を金融機関から調達すると
なると「創業計画書」や「損益計画表」などを
作成・提出することになります。
お金を貸す側の金融機関はまず「創業計画書」を
見てどんなビジネスかを理解し、次に「損益計画表」を
見て、その計画で貸したお金をちゃんと返して
もらえそうかを判断します。
ちなみに最近は横文字系のITビジネスだったりすると
創業計画書を読んでも、いったいどんなビジネスやら
理解が追いつかないことが多々あります・・・笑
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
金融機関の担当者がこの「損益計画表」で気にするのは
その「数字の根拠」です。
その数字に根拠はあるか
私も創業計画書や損益計画表の作成支援をしていますが
ここで疑問符がつくケースがよくあります。
損益計画に説得力がなければ、返済の原資を確保できずに
貸したお金が戻ってこない、と判断されてしまいます。
そうすると融資を得ることができなくなります。
最終的に創業そのものを断念、という可能性だってあるのです。
ここで具体例で見てみましょう。
【居酒屋を開業する場合】
・営業時間 17時~23日
・平均客単価 3,000円
・座席数 20席
・月営業日数 25日
月間目標売上 500万円
(コロナでの時短営業や席数の間引きは考慮しません)
さあ、この計画の説得力たるやいかがでしょう?
結論から言えば達成困難な計画と言わざるをえません。
通常、居酒屋における顧客の平均滞在時間は2時間ほど。
これで計算すると
1日あたり売上 500万円÷25日=20万円
1日あたり客数 20万円÷3千円=67人
1日あたり座席回転数 67人÷20席=3.3回転
(ほかにも考え方はあります)
この目標売上を達成するには3.3回転が必要です。
しかも、開店から閉店まで。
しかも、毎日毎日、月25日ずっと。
回転直後と閉店近くは回転率が落ちるとすれば
それ以外の時間帯はもっと回転が多くならないと
辻褄が合いません。
が、飲み頃な時間帯に都合よく短い時間で次々に客が
入替わるというのも難しいものです・・・。
そうなると金融機関の担当者からすれば
「ちゃんと考えてるのか・・・この人、大丈夫?」
となり、結果として融資を得られなくなります。
業界平均指標なども確認する
それぞれの業種や業界に平均指標などがあります。
例えば、提出した損益計画表の数字が業界平均から大きく
乖離していると計画に信憑性を持たせられません。
その乖離が独自のメニューやサービスで実現できると
説明可能なものであれば問題ありません。
しかし、実現を可能する「特別な何か」がなければ
「信憑性が低い計画」と見なされて、融資の審査に
不利な影響を与えてしまいます。
やっぱり業界平均の数値などは事前に押さえておきたいです。
業界平均指標などはどうすれば分かるか
業界平均のデータを調べる代表的な手段を2つご紹介します。
(1)日本政策金融公庫の「中小企業の経営等に関する調査」
日本政策金融公庫が調査を実施し、その結果をHPにて
公開しています。
業種ごとの平均利益率や経費率など多くの指標が掲載されて
いますので、事前に確認しておきましょう。
(2)(一社)金融財政事情研究会の「業種別審査辞典」
この「業種別審査辞典」にも経営数値の参考として
「TKC経営指標」や「東京商工リサーチのTSR中小企業経営指標」
等が載っています。
ただ「業種別審査辞典」は公庫のように気軽にHPで参照する
ことはできません。
しかし、大きな図書館や商工会議所に置いてあったりするので
是非そういったところで確認してみてください。
ちょっとした手間をかけるだけで損益計画の数字の根拠を
示すことができ、「損益計画表」だけでなく「創業計画書」
全体に説得力を持たせることができます。
そうすれば、金融機関の担当者の安心感も高まり
あなたを「応援したい」という気持ちにさせて
融資の実現に近づくことができます。
創業時はやることも多く、悩みも尽きません。
特に「創業融資を確実、満額かりられるか」は創業の実現に
直接影響するため重要です。
今回は「損益計画表」の目標売上高にフォーカスして
お話しましたが、これはほんの一例です。
「損益計画表」や「創業計画書」全体を考えれば気をつける
べきポイントはたくさんあります。
金融機関からすれば、これまで実績のない(創業だから
当たり前ですが・・・)人やビジネスにお金を出すのです
から慎重にならざるを得ません。
申込者の一定数は「否決」に直面するのが創業融資です。
しかし、これは創業希望者が自分で計画を作成して
申請した場合も含まれます。
計画を自分で作るのは当然ですが、「自分だけ」で作るのと
「専門家の支援」を受けて作るのでは全く結果が違って
きます。
自治体の創業相談や我々のような支援サービスをお届けする
ものでも構いません。
是非、専門家の力をうまく活用しながら創業資金を獲得して
ビジネスのスタートを切って欲しいと思います!